日を貫けば兵乱の兆し/佐々宝砂
 
雲のない、風のない、
夕暮れの山の静かな尾根に、
連れ合いをなくした龍が、
孤独な炎をあげる。

ぼんやりとけむる色彩は、
何色と定めることもできず、
ひらりひらりと空に拡散し、
おぼろな弧を描く。

誰が言ったものか、
日を貫けば兵乱の兆し、
誰がそれを知ろうか、

白虹暮れかかる日を貫き、
日々を貫き、
不安げに白々と光り。


初出 蘭の会7月月例詩集
 http://www.hiemalis.org/〜orchid/public/anthology/200807/

戻る   Point(2)