七夕/相馬四弦
 
うとしない

ひげのあたりを指でなぞりながら つぶやく

みずあめ なめたい




ときおり 閑かに通る青 笹をこする

もうずいぶん歩いた くびのうしろ 虫の声無く

姉さんは鼻緒を気にしていた

やしろの篝火が 月の綿をはじく音

かすかに聞こえる

帷に隠せない若竹の匂い 夜半 叢をころがって

くらがりを かきむしるように歩き

少しひらけた窪みに かたむいた五輪塔を見る

ななめに伸びている憐れな竹に額をぶつけた

ほんのすこし 笑い声が聞こえて

笹の葉が一枚 姉さんの手に落ちる

お面をもちあげて その口元にほころびはなく

おまいり しようよ

ただようように 竹の闇間をすりぬけていった

鈴を鳴らしながら ちりん と




おいてけぼり

姉さんの顔を思い出せずに

ひざまずいた

最後にもう一度

ちりん と 鳴った

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