七夕/相馬四弦
 
その入り口にある 水溜りに浮かぶ弓張りの月が

太く老いた竹の節を 浅葱色にぬらしていて

ここから先に入ってはいけないと 知っていたけれど

だけど小さな燐の火が

竹の闇間を泳いでいるからと

姉さんは いこうよ って

手首に巻いた鈴を鳴らした ちりん と




邑のゆらぎが見えなくなって 一刻

ほのかに冷たく この竹林の 果てのない

半分欠けた境界杭のそばに

ぼろぼろの筵が捨てられていた

その端を踏みつけると

裏に潜んでいたなにかが するりと抜け出して 籔に消える

姉さんは

的屋からくすねた猫のお面を はずそうと
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