嫌われ者/1486 106
 

動物達の意志を代弁するために
嫌われ者は何年ぶりかに山を下りた

嫌われ者は必死に叫んだ
役場に乗り込み何度も説得した
だけど誰も耳を傾けなかった
都会の人々に嫌われていたから

やがて森は競技場に変わり
動物達は姿を消した
嫌われ者は家を失い
町から貰った僅かなお金を
役場の前で破り捨てると
そのまま町を出ていった

嫌われ者は今小さな村で
農作物を耕しながら暮らしている
そこには嫌われ者を嫌う人はいなかった
みんなが自然と仲良しだった

休む時は切り株に腰掛け
動物達との会話を楽しんだ
嫌われ者はなんでも正直に話したけど
都会のことだけは口にしなかった
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