光/アンテ
うちに弱りはてて
枝が全部枯れ落ちて幹だけになった
雲行きはますます怪しくなり
稲光が何度かくり返したかと思うと
激しい音とともに雷が真っ直ぐな樹に落ちた
幹が一瞬で焼け焦げ
火は他の樹々に燃え広がって
大量の枝葉が灰になり
ようやく火がおさまったあとには
蛇行した樹々の幹が林立しているだけの
奇妙な風景が残された
やがて雨が落ちはじめると
灰は土にかえり
樹々はうなだれて雨に打たれつづけた
次第に雲が色を失い
雨足が途絶えると
雲のあい間にわずかな切れ目ができて
光の束が森を明るく照らした
樹々は蛇行していた幹を必死にのばして
全身を震わせて叫んだ
それを合図に
雲はもとどおり空を黒く覆って
光を閉ざしてしまった
森が再び暗闇に包まれた頃
樹々の幹からようやく
新しい枝葉が芽を出した
枝は空をめざして力強く伸び
葉は光を求めて大きく広がった
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