パブロフのクイックルワイパーウェットシート/土田
 

ガス水道=金という公式は寮母の口からは出てこず
シャワーを出しっぱなしにして
五リットルのやかんで麦茶を煮出しながら
鼻歌ばかりに時間をかけていた

ベル涎 ベル涎 ベル涎

クイックルワイパーが滑走する
見覚えのないなにかの肉のかけらは
ビーフジャーキーみたいになっていた
祖母の冨子が無理やり送ってきた漬物たちは
いまだにうまく踏んばれない洋式便所の
渦のなかへと消えていった
なんとなくミドリに振られた理由がわかった気がした

ベル涎 ベル涎 ベル涎

クイックルワイパーが滑走する
こまかなほこりが一斉に宙を舞う
それでも眠くなれば眠れるのだから
歴史は
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