村長/吉田ぐんじょう
 
ひそひそひやるのに夢中だった

前の村長は古い自転車に乗って
かごにはひったくり防止のゴムをつけて
スポークにテニスボールなんて挟んで
だからとても親しみやすかったんだけれども

そんなだから新しい村長は
いつまで経っても村に馴染めなかった
運動会でも子ども会でも村の寄り合いでも
なにかにつけて
命を大事にしましょう
の一点張りだし
もうそれ飽きたし

そのうち村にある噂がたった
それは新しい村長が
ノイローゼになって自宅で夜な夜な
いろんな虫をいろんな方法で
殺しているというものだった
だから新しい村長の家から出されるごみ袋には
いろんな虫の死骸がぱんぱ
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