自分を知ること/結城 森士
 
ve Up」なんだ。
バイトは辞めていいのだ。俺には努力なんて出来なかったのだから。今後、あの居酒屋に対して努力をできるはずがないのだから。「俺には、居酒屋で働く努力が出来ない」のだ。それは同時に、他のどんな仕事でも駄目だろうと言うことだ。


最後まで店長は俺に冷たく、そしてその冷たさと同時に、おせっかいなほど俺の心配をしてくれた。冷淡だが、きちんとした人間そのものだった。


彼こそ、正真正銘の己を知る人間だった。
己を知るとは、ハングリーであること。
己を知るとは、足るを知ること。
己を知るとは、失敗を認めること。
己を知るとは、捨てる勇気を持つこと。


俺は店
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