数多分の一の本音/松本 卓也
 
いつもより早く仕事を済ませたとて
やりたい事など特別何も無い現状
無理やりに酔っ払ってでもいないと
押しつぶされそうなのは心ばかりでもない

逃避するほど豊かな精神性も無く
すがるほど人を大切にしていない
独りきりというありふれた言葉が
どうしてこんなにお似合いなのだろう

もし思うがままに自分を飾る才能があれば
もし気付かぬ内に同情を買う事ができれば
少しは現状マシになったかもしれないとか
鏡の奥で濁った瞳を映さなくてすんだとか

思い耽るしか能がない
何より無様な虚構の住人

現実を変える力など無いと自覚している
ただ変質していく体調だとか精神だとか
医者はカルテに肝臓の変調以外書く事が無いと告げるけど
名付け親も無く頼る薬も無いからこそ
弱さを売りに憐憫を糧にする皆様に比べて
どちらのほうが孤独なのかと問いたくなる

あんた方の様に同情に囲まれてみたい
それが数多分の一の本音ではあるけどね


戻る   Point(2)