夜に溺れる/ミゼット
月光を手繰る振りをしていたら
どうやら海が釣れてしまった
窓を開けているんじゃなかった
部屋に溢れたいっぱいの海は
両手で抱えられる所かますます増えて
わたしは飲まれた
手を広げたまま
ごぶごぶと洗われて
部屋の中を流されるわたし
散々苦労して結ったシニヨンが
ゴムごと解けて広がった
水を通して歪む景色に
広がる髪の毛を重ねたら
網みたい
わたしがわたしを捕まえている
指の先を流れていくあのゴムは
仕事用のだから
無いと明日こまるなあとわたし
溺れ死んだらそれどころじゃない、と
わたしがもうひとり
腕を足を動かして
窓の方へ
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