夜に溺れる/ミゼット
 

月光を手繰る振りをしていたら
どうやら海が釣れてしまった

窓を開けているんじゃなかった

部屋に溢れたいっぱいの海は
両手で抱えられる所かますます増えて
わたしは飲まれた

手を広げたまま
ごぶごぶと洗われて
部屋の中を流されるわたし

散々苦労して結ったシニヨンが
ゴムごと解けて広がった

水を通して歪む景色に
広がる髪の毛を重ねたら
網みたい
わたしがわたしを捕まえている

指の先を流れていくあのゴムは
仕事用のだから
無いと明日こまるなあとわたし

溺れ死んだらそれどころじゃない、と
わたしがもうひとり
腕を足を動かして
窓の方へ
[次のページ]
戻る   Point(5)