「水槽」/ソティロ
15.
皿を水槽に浸し
筆で攪拌した
色はじわじわと広がり
やがて行き渡った
礼を欠いた乱暴な手順だったけれど
とにかくそれは成功を収めた
濁し汚すことが
唯一の逃げ道だったに違いない
水槽が青く、青くなり
それは確かに欠陥だったけれども
その色をとても好きになれたし
うまくやり遂げた自信があった
再び水槽は戻ってきた
16.
透明な青の不完全な世界、を
望むかたちで手に入れ、あいした
けれどついさっきの行程が
脳裏に焼きついて離れない
青が侵してゆくさまは
つまり快楽だった
のどがからからに渇いて
汗がにじみ出てきた
今か
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