街の鳥葬/しろう
 


破れたジーンズと仰々しい金具のブーツが不意にベタつくような重さを持ち、煩わしくなってスクランブル交差点で脱ぎ捨てた。このくらいのことでそう驚く人もいない。
着替えも寝床もない俺は、裏通りの、油の染みついたゴミ捨て場のビニールの間にくるまって寒さだけをしのぐ。会員制のクラブから出されるゴミは独特の、苦くて甘ったるい生姜漬け、いわゆるガリのような匂いがする。夜の女のうなじの匂いだ。
野良猫のように野垂れ死んで、このままこの街で唯一の祭壇で、カラスたちに肉を捧げるのも悪くはないと思った。
人間に食われるほど、落ちぶれちゃいないんだ。






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