姉/佐藤清児
近くで
手よ
大地から生えよ
私はここにいるよ
やがて足音が遠ざかってゆき
再び静寂が訪れた
鳥達は皆
其々の住処へと飛び去っていった
(お母さん、)
後にはただ
溶けきれなかった想いが存在している
日に日に
私は浅くなって
日に日に
奥に埋もれていくようだ
(お母さん、)
珠に
飛び立てなかった雛の
果てた躯が私の元に転がってきた
草木の匂いは
彼らを包み込んで
下へ下へと
(下へと)押し込めた
一体、
どれほどの想いが
沈んでいったのだろうか
干からびた老婆が
近くにやってきて
何かを呼んでいた
それは誰であろうか
姉が過ぎ去ってから
どれほどの時が経ったのだろうか
私はただ
名前の無い赤い花を咲かせているだけである
(私はもう行きます)
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