かつていちどは人間だったもの/影山影司
いだろうか。一年前のあの日、眼鏡の部屋に匿われているのを見つけ、そのまま連れ出したのだ。もともと障害の多い家系の子だったらしい。言葉が不自由であったが、元々日常生活でそれほど苦労はしていないようだ。瘤があるのを除けば通常の人間となんら変わりない。
帽子をかぶらせ、ゆったりとしたワンピースでも着せておけば周囲にばれることなく普通の生活を送れた。鬼は賢かったので自分の状況を理解し、質素なこの生活にも満足しているようだ。
俺も今の生活を気に入っている。
ところで、最近、思い出したのだが、芋虫は成虫へと成長するために、蛹化する。それまで順調に大きくした体を、堅い鞘の中でドロドロに溶かし、再
[次のページ]
戻る 編 削 Point(3)