かつていちどは人間だったもの/影山影司
々と仕事だけを続けてきた。
だから俺と眼鏡は仲は、他人に近い。
そんな眼鏡が、突如深夜に俺の部屋を訪ねてきたのだ。内心うれしくもあり、うれしいと思った自分自身に驚いた。
「ホモサピエンスはきっと、楽しんでネアンデルタール人を殺したんだろうね。もしかしたら正義感に燃えてたかもしれない。悪を討つための暴力ほど、魅力のある感覚はこの世に存在しない。だから人間はこんな時代でもせっせとよく分からない悪いものを相手にデモするし、自由は良いことだ、と言いつつ不自由を攻撃するんだ。どちらも理由があってそうなんだから、良い悪いとは別のことなのにね」
眼鏡はそう言って、懐からメモ帳程度の分厚さになっ
[次のページ]
戻る 編 削 Point(3)