IT Apples/渡 ひろこ
林檎たちはときどき浮上する
羊水の中で
留まらないかのように
みずみずしい細胞に満ちた肌で
ニコチン呼吸する
お互いの水滴を嗅ぎわけながら
すり寄せあっている
ピリピリした電波の中でなければ
自由に回遊できないのと
相手の形を確かめると
またそれぞれの海へもどっていく
どっぷり生暖かい海水に浸って
触手はいよいよ長くなり
ぐるぐると世界中を巡って
やがて何重にも縛られ
オゾン呼吸する
ふるえる大きな林檎は
次第にゆっくりと
青い悲鳴をあげはじめる
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