ホタル/chick
た。
エレベーターの下りボタンを何度も押した。急かしてもその箱は間抜けに、ちんと鳴る。自動ドアを抜けて、自分たちの部屋の真下にある駐車場に駆け込んだ。誰かが、そこに寝転がっていた。ぴくりとも、動かずに。呼んでも、答えずに。
信じられるはずがなかった。けれど、冗談でもなさそうだ。
誰かが落ちたと、ホタルを飛ばしていた「お仲間」がどんどん駐車場に集まってきた。それでも私は、どうすることもできなかった。誰かが呼んでくれた救急車に乗り込んで、言われたままに質問に答えて、あなたとは一度も言葉を交わさないまま、私たちは引き離された。
ただ印象深かったのは、人差し指と中指に挟まっていたはずの煙草
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