ホタル/chick
機も、すべてが嫌になった頃があった。東京なんか来るんじゃなかったと、何度も里帰りを考えながら排気にまみれた空を見上げていた。人情がないと思っていた。優しさが見つけられなかった。
滲む目で見た都会の夜景は綺麗でもなんでもなく、腫れた赤い目は思い出にも何にもならなかった。
太陽も、青空も、星さえも、すべてが消えてしまえばいいと思った頃があった。あのマンションに引っ越す前のことだった。
東京は怖いところだと聞かされ続けた子供時代だった。祖父母も両親も反対した上京だったが、私はあなたが好きで好きで東京までついていった。
あなたのことをほとんど愛していたのだ。つまり、その、煙草以外。
「不
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