ものみな、食欲を感じるとき/寅午
ゴミ集積所に、おにぎりのかけら
落ちていたごちそう。
いちばん最初にすずめが見つけた。
2、3羽やってきて、米粒をひろう。
そこに、あらたな来訪者。
1羽のカラス。おにぎりの近くに降り立つ。
おにぎりを間にはさんで
すずめとカラスがにらみあう。
小さなすずめはカラスを前にしても、一歩も後には退かない。
さすがのカラスの意志も
すずめの一途なにらみに挫かれて
視線をそらし、少しづつごちそうに近づく作戦にでる。
「ダメよ、近づかないで。これはわたしたちが最初に見つけたのよ。
すずめが言う。
「最初に見つけたって?
ヘン、おれは腹をすかせてるんだ。少しぐらい
お目こぼししてもいいじゃないか。
「ダメよ、ゆずれないわ。
大口のあなたなんかに、お目こぼしをしたら
ごっそりとかっさらわれるのが、おちだわ。
決着はあっけなかった。
人間のほうきの一掃きがかれらのご馳走をさらった。
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