お台所の話/吉田ぐんじょう
 
ると
灰色の雲に切れ目ができて
そこから太陽の光が射した


明け方に冷蔵庫をあけると
夜のうちに繁茂した色々な野菜の芽が
オレンジの光の中に絡まりあっている
プラスティックの棚なんか
すっかり無くなってしまって
小さな四角い空間には
どこまでも草原が広がっている
まるで楽園のようである

わたしはそれを見ていたいがために
つい冷蔵庫を開け放してしまう
ついでにハムやりんごも食べる
荒い息を吐きながら

そうしてわたしは冷蔵庫の前で
どんどん大きくなってゆく
下着なんか脱ぎ捨ててしまって
肌色のけもののようになる



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