「 あぶだくしょん。 」/PULL.
ら帰ってくる、帰ってきたことばは乱雑に内耳をかき揺らし、揺らされてわたしはさらに、誘拐される内側から、解け出したわたしは打ち消されねばねばと揺さぶられるままに流れ、外に向かって溺れてゆく誘拐は、仮定の意味を要求しなおもねばねばと執拗に揺さぶり溺れながらわたしはそれでも泳ぎを覚えようとするのだがそもそも泳ぐということすら解らず意味も瞼の裏でことばを引いてみたもののやはり解らずかえって帰ってきたことばだけが増えてことばは重くのしわたしのからだは深く溺れるのものでわたしは眼を閉じて瞼の奥に綴じ籠もる。
こん。
こんこん。
誰か、わたしの外で瞼を打つものがある。
こんこん、こんこん
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