宇宙での出来事/エチカ
 
 ぽい。

“くじら”  ぽい。



海岸に打ち上げられてしまった鯨の死体は目を見開いて私を見てた。
私を見てたのは鯨じゃなくて鯨の目の中の私でもあって、私は私を見てたことになる。
しばらくしたら、鯨は焼かれた。ただぼんやりと焼け落ちた。鯨のお肉はどんどん焼かれて消えていった。骨が白くて砂浜の中に消え入りそうだったから、小瓶の中に入れて持ち帰った。小瓶の中で骨はカラリ、と音をたてた。家に帰り着くまで何度もカラ、リと。
海から生まれたの私たちは。それとも猿の進化した生き物なの私たちは。あたし達のDNAだとかそういうの。どっからきたの。いわゆる“遺伝子のっとり”とかいうやつなの。
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