冷めたコーヒー/桜 葉一
　
る。
自分の思うとおりに行かないと嫌らしく、時々強く私に当たった。

結婚する前はこうではなかった。
彼はもっと優しかった。
もっと気遣える人だった。
そんな彼を私は愛していた。
結婚して夫は人が変わった。
……いやそれが本当の彼だった。
男ってこう言うものかと思い知らされた。

私が急いで砂糖を用意しても、彼の怒りは収まらなかった。
頭を叩かれ、そのコーヒーをかけられた。熱かった。
私も我慢してはいられなくなった。珍しく夫に言い返した。
折角の朝の団欒が台無しになった。
息子が心配そうな顔をして起きてきた。
それをキッカケに私達の喧嘩は終わった。

夫は会社へ出て
息子を学校へと送り出した。

私は１人、夫と飲むはずだったコーヒーをすすった。
完全に冷えていた。
私の心も冷え切っていると感じた。

離婚届を取りに行こう。
支度をして私は家を出た。

---

戻る　編　削　Point(1)