社会水族館/ゆるこ
 
乾いた瞳を泳がすと
水族館にいるウツボのように
底辺を這う
つややかな自分を思う
てら、てら と
内緒話のようにひっそりとしたぬめりのなかで
色んな鱗を身に着けながら
明日の予定を考えるふりをすると
光もない無機質な通勤快速のなかの一部に成れる気がした

誰かの溜め息が
自分の酸素みたいなものになって
てら、てらのぬめりは
人の足を踏まない魔法になる

朝を浴びても
コンクリートは発光せずに
淡々とそこで
暖かくなるように体を揺する

その横を
うまく風もきれずに
歩く私、
わたしは。

餌を待つ空しいウツボ
ぬめりのない、
誰にも気付かれない
誰にも



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