飛ぶ日/新谷みふゆ
 
 悲しみを握ったりするなよ
ひ と つ ひ と つ  きみの指を解いていく

鳥の声で泣いていた 生の切れそうな電球を
どうすることもできなかった小さな罪を
鋭角の胸に突き刺し 引き摺ってゆけば

きみの肌はやわらかく
頬をつつくと笑うのに かじかんで 軋んでいた
不器用な触れ方の 不完全な個体の
首筋には みつばちのささやきがあった

飛べない形で空を想う
毛布を脱いで
痩せた背に現れた肩胛(かいがら)骨が歌っている
あぁ 冬がすぐ其処まで来ているね
空気も絲を張り詰めたんだね
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