First Love/円谷一
 
君と二度と逢えないような気がして、今思うと僕は不安になっていた。チリンチリンと鈴の音を鳴らして戯ける君の笑顔を見て、無性にキスがしたくなった。
 母親の代から使っているふにゃふにゃの英和辞書は、真ん中から広げて持ち上げてみると、昔から変わっていない僕のスパイラルパーマの髪型にそっくりだった。僕は宇多田ヒカルの「First Love」を聴きながら感慨に耽って、つい涙ぐんでしまった。学校に黙ってやっていたアルバイトが終わって君と待ち合わせしているクラブへ入ると、君は昼間と髪型を変えて壁に寄り掛かっていて僕と目が合うと、自転車に跨り、チリンチリン、と鈴を鳴らす真似をして微笑んだ。僕は学校ではテンション
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