スピンオフ/影山影司
 
 その男の父母は頭脳明晰であつたが、いかんせん欠けた人間であつた。
 その証拠にその息子は、うんと賢くうんと欠けていた。

 彼は幼少の時分、「阿呆として生きねばならヌ」と思うた。
 難解な数式を解いた後の名声や
 市場を支配して稼ぐ金に
 1Bitほどの価値も見い出せなかつた彼は

 頭の中に宇宙を作り その外れに蒼い蒼い星を置き
 無人の星の真ん中に 黒い黒い高層街を積み立てた

 高層街のビルの一つの区画の中にあるアパートの一室
 が彼の生きる場所となつた。

 現実世界で彼は 広い屋敷の一室の片隅で踞つている白痴の少年で
 頭の中での彼は 同じく踞る奇才の偉人
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