野良でさえもない/松本 卓也
気忙しく流転する景色の片隅で
只管に平凡を刻んでいく人生を
ただ無造作に転がして
ただ締まりなく垂れ流す
雑居ビルの合間に重なった
生ゴミに卑しく貪りつく
道行く視線に無頓着を気取る
野良犬がただ羨ましかった
彼は何よりも気高く渾身の生を刻む
たとえその末路が野垂れ死にであろうと
生ききった事を誇るのだろう
後悔など微塵も感じずに
人並サイズの図体に
ネズミ程度の肝っ玉
誰かに憎まれる事も無く
誰かを憎む事も無く
見比べれば単純な図式
誇り高さを忘れた現状
噛み殺した幾百の咆哮
やり遂げるだけの業務
重ねた理屈に差した嫌気が
何処までも世界を狭めていく
ただ生き残りたいだけなのに
僕は何故こうも小さいの
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