ストーン・サークル/望月 ゆき
 


と、おじいちゃんが手のひらをパッと開くと、ウサハナが立っていた。

急に背中が気になり、シャツを一枚脱いで確認した。
そこには、真っ赤なインクで押されたウサハナが笑っていて(いや、
泣いていたのかもしれない)、それは吹き出し付きであった。

「 さ よ な ら 」

もはや遅かった。
顔をあげて、ぐるりと一周見回すと、囲む者たちは石になっていた。
走らなければ。と思うと同時に、私も足元から石に。

    *

花壇の向日葵から風が吹いて
噴水のしぶきが頬に散り、我にかえる。
陽射しはもう真上からそそいでいて
帽子のつばの影の中で
涙がいく粒かこぼれた。

拭う手のひらは
生きている。
どうしようもなく。

砂場のへりに
息子が石を並べていて
もうあといくつかで、それは一周しようとしていた。

行くわよ、と
あわてて腰をあげ、
名残惜しそうな息子の手をひいて
中途半端なストーンサークルに背を向けた。
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