どうしようもない春がくるからピンク/水町綜助
 
僕たち二人は
流れない都会の川に浮かんだ
揺れるカップを上から眺め
波紋のひとつひとつの輪を追っていた

取り残される春が
夜毎細胞を分裂させる
桜のつぼみの結実のように迫っていた

鏡月グリーン

あらためて詩的なひびきの一本ずつがもたらした
酩酊だった
夜に染み出してしまう感覚
鯨飲して
体の中に溜めきれなくなった水分と一緒に
流れ出してしまえばいい
ほらだから
街灯も
滲んでいるだろう


春がくる
どうしようもなく置いていく春が
どうしても過ぎていく
うつろいの季節だ
だからいまはじめて
てくてくとあるき
ホームセンターででもペンキを買い込んで
咲くより前にピンク色を塗ったくって
きみにでも
見せてやりたいとでも
思うよ


戻る   Point(9)