どうしようもない春がくるからピンク/水町綜助
僕たち二人は
流れない都会の川に浮かんだ
揺れるカップを上から眺め
波紋のひとつひとつの輪を追っていた
取り残される春が
夜毎細胞を分裂させる
桜のつぼみの結実のように迫っていた
鏡月グリーン
あらためて詩的なひびきの一本ずつがもたらした
酩酊だった
夜に染み出してしまう感覚
鯨飲して
体の中に溜めきれなくなった水分と一緒に
流れ出してしまえばいい
ほらだから
街灯も
滲んでいるだろう
春がくる
どうしようもなく置いていく春が
どうしても過ぎていく
うつろいの季節だ
だからいまはじめて
てくてくとあるき
ホームセンターででもペンキを買い込んで
咲くより前にピンク色を塗ったくって
きみにでも
見せてやりたいとでも
思うよ
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