平民一号は今日も嘆きを詩にする/松本 卓也
引き出しの奥にしまってあった
ずっと昔に書いた詩達
青臭い感傷に身を委ね
世界に種が撒けると信じた
尊大なナルシズムに塗れていた
胸から羞恥が沸いてくる
若き己が描いた夢により
今の情けない生き様を刻む
三十路のオッサンに対して
こうなりたかった訳じゃなく
こうとしかなれなかったんだ
朽ち果てるよりずっと前に
ただひっそりと消えていった
例えば情熱とか衝動とか
あの頃まだキャンバスは真白くて
何万の色彩で自由に描いていけると
本気で信じていたんだ
だけど書き散らかして汚れた先に
今は灰色の道だけが地の果てに伸びる
誰かに大切にされることも
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