二十年後/三州生桑
 
二十年ぶりに故郷に帰ってきた。友人知人はもとより無く、親類縁者もみなゐなくなってしまった田舎町へと、ただ感傷を慰めるためだけに、一人ふらりと立ち寄ったのだった。風はさやかに吹いてゐただらうか・・・? いや、春一番の名残が吹き荒れ、黄砂まじりの細かな春雨の降る、寒々しい月曜日だった。
私はレンタカーを半日借り、すっかり変はった街並みをゆっくりと流して行く。威勢の良いのはパチンコ屋ぐらゐのもので、あれだけ乱立してゐたコンビニの数すら減ってゐる。活気のない、典型的な地方都市。やはり我が故郷は、どれだけ時を経ても灰色なのだった。
郊外にあるショッピング・センターが、辛うじて生き残ってゐた。全体的に薄汚
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