テーゼ×アンチテーゼ=バウムクーヘン/しろう
 
てゆくかもしれない。生き急ぐ事をしたい。

夜はふいに誰かと話したくなって、友達を部屋に呼んでシェリー酒を飲む。笑いぐさの失敗談から、人生哲学まで引き出してみるが、何かを生み出そうってわけじゃない。すべてを分かったように語るのは、分かっていない事実に飲み込まれないためだ。そうでもしなきゃスピードを維持できない。とにかく時を上手に浪費できれば、それで良しとする。この世では思慮深く生きようとするほどに、見落とした思慮に気付くばかりだ。

俺はさ。
峠の隧道をくぐり抜けた先の急カーブで曲がりきれずにガードレールを突き破ってあの夜景の中に飛び込んでしまってもいいと思っているんだ。
スピードの解放ができるなら。


日々はバウムクーヘンを一層ずつ剥がして食べるのに似ている
パティシエがバウムクーヘンをどうやって焼くのかは知らない
が、おそらく手間がかかるに違いない
だから、バウムクーヘンはかぶりつくように食べてはいけない







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