メール/パッサカリア/チアーヌ
 
結婚したくなんかなかったんだ。それなのにずうずうしく妊娠なんかしやがって。あいつに手を出した時、おれはどうかしてたんだ。ただ、溜まっていただけなんだ。
でも結衣ちゃんは違う。結衣ちゃんに対する気持ちは違う。
 俺は結衣ちゃんが欲しい。心の底から。
もう夕暮れが近づいている。なんてきれいなんだろう。こんなきれいな夕暮れを見るのは、なんて久しぶりなんだろう。
恋なんて、俺にはもう訪れないのだと思っていた。いや、こんな思いはむしろ、生まれてはじめてかもしれない。
 地方都市とは名ばかりの田舎で生まれ、秀才の名を欲しいままにした俺。
 でも所詮田舎の秀才は東京の大学へ来ればただの人。

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