あと幾日/はるこ
 
事にしてくれているから。
 双子だったらいいなぁって 思うの。 兄さんとわたしみたいな。」
ふふふとさらに眼を細めて佐希子は笑う。
こんな美しい顔を、こんな美しい妹の顔を、 俺は見たことがあっただろうか。

あと幾日だろう、佐希子と、こんな和やかな時間を持てるのは。
東京に行ったらきっと、 今日の日のことなんか忘れて知らない誰かと笑いあったりするんだろう。
佐希子だってきっと、青森で小さくたって幸せを掴んで、こうして俺といたことなんて忘れてしまうんだろう。

でもきっと、どこか隅の方では覚えている。
それは佐希子の子が引き継ぐかも知れない。
だから、だから。


「佐希子、いつかまた会おうな。」
視線をそらさずに真っ直ぐ、言う。
「あは、 兄さん何を言ってるの。 会わないわけないじゃない。」
「そうだな。」

でも確実に俺達の世界は終わりを告げる。
それまでの幾日か、
今までと変わらず、佐希子を守ってやる。
きっと離れても、その信念は細胞が覚えている。
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