炭素循環 ☆/atsuchan69
 
パスの針は小刻みに震え、
 アルキメディア螺旋をえがく赤い航路の
 古びた因果を残した罪の轍に
 つよい憎しみを帯びて一瞬、かがやく
 ふたつの呪われた瞳‥‥

 ――その日、

 羽ばたかぬ烏合の巣と個体を
 夜の狂風は、「ふうっ」と一息で吹きはらい、
 断末魔を叫ぶ若い女の金切り声と
 血と骨の瓦礫をまぜた惨劇を海の底に沈めて
 やがて波打ち際に残された壊れた都市の
 邪な女神である欲望の姿かたちは、
 ひとり寂しく海辺に立つと
 腐敗したメタンの混じった青白い火炎を吐き、
 艶やかに、美しく肢体を燃やしながら
 ダイヤを散らした夜の空を虚しく仰いだ

 
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