mahirunoyumearuki/水町綜助
から水が噴き出し
丸い蓋が噴水に浮かぶ
浮かび続け
まるでチョコレートクッキーのようにも見え
そうして散った飛沫に
虹が架かっているのを知り
道の両脇すべての窓から
働きに出ていない人々が顔を出し
太陽を背にして虹を見る
もう鍵束の音も耳に入らない
ぼくはその中を速やかに歩く
ぴっちりとした舗装路の下の土中を空想しながら
疑似天気雨も染み込まない
何十年も覆いつくされてきた土の中を
頭打ちで生き埋めになった蝉の幼虫を
黒い土の上を
手を振って
歩いた
道の先
澄んだ空気のさき
横断歩道の信号は青く
早くわたる必要があるようにおもえ
わたった先には人がいるようにおもえ
ぼくは冷たい空気を吸い込みながら
口の中やあと言う準備をしたゆめのようにあるいて
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