聖性、冬、機械/ケンディ
のだった。視覚の絶対的限界を彼はいつしか発見することになる。それが今日の悲劇になった。
彼は直接自分の眼球を見たかったのだ。だから自分の眼球を抉り出した。否、抉り出さざるをえなかった。彼には他に選択肢がなかった。そのことを知るに至った彼の冷静な理性――これに私は拍手と喝采で祝福を与えたのだ。重要なのは、眼を見るのに鏡では満足しなかったという点だ。これが彼の哲学を表している。もしも、眼球ではなくて、後頭部を見たいなどと彼が思ったとしたら、もしも彼がそんな人間であったとしたら、私は彼に近づかなかったはずだ。
彼のやったことは、彼の考えと感情を最大限に突き詰めた結果だった。小難しく言えば、彼の行
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