聖性、冬、機械/ケンディ
 
面のテーブルにぼとぼとと塊のまま落ちた。血はどす黒かった。その際彼はヘブライ語で何かを口早につぶやいていた。おそらく聖書の一節だったと思う。私は彼に古代ギリシャ語あるいはラテン語で話し掛ける以外になかった。というのは、彼には古代ギリシャ語かラテン語以外で話し掛けることは許されていなかったからだ。この戒律に反したとき、私は、壁に取り付けられた特殊な錠前に両手首、両手足を縛り付けられ、全身を激しく鞭打たれ続けた。その後1ヶ月の沈黙行が課せられた。

彼は自分の眼球を深く愛していた。何もかも見渡せる眼球を持っている自分の境遇を心底愛していた。宇宙のはるか遠くも、物質の極微の粒子も。少なくとも機械さえ
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