こんな夜は凶暴になる、/榊 慧
を言った。腕のなかで俺の呼吸がわかる。肺から息をしぼり出した。
俺はゆっくりと背中をさすった。空気はあいかわらず生温く、酸素は揺らいでいた。ときおり痙攣のようにもがいている。何がそうさせているのかはきっと俺には一生わからないだろうと思う。疾走しながら何かを必死で探している。
多分、俺は今、まったくの不感症だ。不感症のなかで眠りにつく。
体中が湿っていた。それでも背中をさすり続けた。陥没してしまいそうな俺の体を抱きしめた。もうとうに染み込んでいる鼓動に集中した。開けっぱなしの扉がギィ、と軋んだ。
戻る 編 削 Point(1)