仮設の壁/喫煙変拍子
 

某月某日

耳を割るような金属音で覚める
目は閉じたまま
ヨタつく足でカーテンの前、起立

生地を掴んでそれを最高速で裂いたら
同時に目を開けたら
流れ込むはずの世界がどこにもなかった

ならいいのに


石灰の階段の上では排泄物が腐り
アゲハ蝶がその周辺を満面の笑みで飛ぶ
淡い自慰模様の箱に詰められた人間は
毎朝一律のリズムで揺れるしかない
諦めた私は今日も
華奢な椅子に足首を乗せて
ワイシャツの口紅を削ぎ落としてばかりいる



翌日

月の上昇に合わせて 覚める

生地を掴んでそれを最高速で裂いたら
同時に目を開けたら
流れ込むは
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