この世界を離れて ★/atsuchan69
。ちゃんとかわりのバイオリンを貸してあるから、そんなにあわてんでもいいじゃろ」
「僕はバイオリンがなおるまでここに居なくちゃならないんだ」
「なるほど。そう、たぶん遅くても春にはまた旅に出られると思うがね」
「春まで? 少し長すぎない?」
「いいや。あとでわかる時がくる、冬が長すぎるなんてことはない。あっという間さ」
冬の終わり。ふたたび町から町へと白い服を着た僕が先頭に立って通りを歩く。
次の町では、高い塔のある広場で人をあつめた。
どんよりとした空の下、父ちゃんのバイオリンの伴奏にあわせて母ちゃんがうたった。人だかりの円陣のなか、僕は天使のかっこうでずっと父ちゃんの
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