この世界を離れて ★/atsuchan69
椅子の足をつかんだまま男はたちあがり、つぶれた顔で床にころがった父ちゃんをにらんだ。
「ころしたる」
そして飛びかかり、おおいかぶさると父ちゃんの首をきつく絞めはじめた。
「やめんかい」
店の入口にふたたび、からだのちいさな男がいた。「喧嘩やったら止(と)めへん。けどこの芸人さんはうちの客人やさかいな。だいいちおまはん、堅気ゆうても始終さわぎおこしてけつかるやないの。おかげでこの町に人おらようになってもうたがな。いままで多少のことはと、このわしも眼つぶってきたで。けど、あかんな。辛抱もここまでや。もうゆるされへん、かくごしときや」
そのうしろから、おおぜいの子分たちがあらわれて男を
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