さいごの坂道。/hope
から、もう、「なにもいらないの」
何度も、そう言ってみるんだけど。
こんなにも、あなたの手を握り締めているのにね。
「ごめんね」
うん、もう少し、もう少し。
僕はここにいて、君の手を、強く握り返す。
坂道の終わりも、夜の終わりも、きっと、もう少し。
君は言う、
「うん、だいじょうぶ」
と。
坂道の終わり。
そこに、君の家があった。
この家は決して【ひとりぼっち】の場所じゃない、
この夜が終わってしまえば。
伝わる【あたたかさ】は、あなたの掌から。
そして、ママの思い出、から。
あたしがまだ幼かった頃の、
ママの膝の上と、
今、どこまでも続く頼りない坂道の終わりで、
あなたの手を握るあたしと、
音も無く流れてゆく、この涙と。
「うん、だいじょうぶ」
戻る 編 削 Point(0)