冴えたやり方/麻生ゆり
 
いものじゃないか」
「外からもちこんだバカがいたってことだろ? かの国ではワクチンを買う金すらないっていうから、エイズんときと同じで、性感染でどんどん増えてるってさ」
「タダでワクチンをくれてやりゃあいいじゃないか」
「…上層部がしぶってるらしい」
「なんでまた?」
「さあ。お偉方の考えることなんぞ、俺ら下っぱにゃあ理解できないよ。ただな…」
 同僚は私のすぐ側まで寄ってきて、声をひそめて語りだした。
「もともと、あのウイルスはダイエットなんてかわいい目的で開発されたものじゃないらしい。どうして政府からあれだけの開発資金が援助されたと思う? 目当ては太りすぎたブタどもじゃなくて、あっちの国々だったらしいんだよ」
 全ては、私たちのあずかり知らぬところで動いていた。
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