私が死んでしまったので/若原光彦
ないまま
わからないから泣いている
巧く泣けば私たちがみんな帰ってくる気がして
私が泣いている
私が死んでしまったので
生き残った私はどんどん泣き方が巧くなる
悲しみ上手になっていく
そして悟っていく
なんて私は死に易かったんだろうと
私も私も死にたかったのかと
やはり私は愚かだった
私たちは愚か者だ
だからといって泣くことはない
笑ってもよかった
盛り上がってもよかった
面白がってもよかった
ふざけていることにすればよかった
なのにこうして泣き続けている
わからないまま
わからないから泣いている
愉快な私がみんな消えて
もう私には泣くことしかできないのか
[次のページ]
戻る 編 削 Point(4)