私が死んでしまったので/若原光彦
私が泣いている
私が死んでしまったので
あんなに手塩にかけて育ててやったのに
小さな頃はあんなに可愛かったのに
どうしてこうもあっけない
未来がぱちんとはじけてしまう
私のいないこれからを
私はどうして過ごしてゆけばいい
だからといって泣く必要はない
私はなぜ泣いている
わからないまま
わからないから泣いている
泣けば誰かが助けてくれるものとでも思って
私が泣いている
私が死んでしまったので
あんなに頼もしかったのに優しかったのに
形あるものはいつか滅びる
いつかはいつでも訪れる
こうなることはわかっていたのに
わかっていてなぜ泣いている
もう誰も私を守って
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