海の彼方、 ☆/atsuchan69
 
鍮の先端がつよく海水を噴き、
僕たちは苛酷すぎる夜明けの洗礼を受ける

ただ、凍えるような波風と
明け方の気温の低さに比べれば、
それでも海の水はさほど冷たくはなかった
宙を仰ぐように一瞬、
オリュンポスの神々が支配する天空を盗み見ると
真っ赤に焼け爛れた暁の雲と闇が、
黒と茶と斑(まだら)に
鮮やかな地獄の火を映して拡がっていた

波は険しく、大蛇が踊るように激しくうねっている

 ――よし。全員、海へ飛び込め!

白髪の教官は顔色ひとつ変えずに言放った。

こうして、朝食の時間までに
自力で艦へ戻った者はわずか数人だけだった

 ある者は、沈み
 あ
[次のページ]
戻る   Point(6)