冬のあと/水町綜助
く
聖性を帯びた光のうちで
蒸発寸前の森林であり
その日暮らしの太陽の終わりであり
夏の島の長い休暇でもある
ひとつ鷹の旋回のような軌道を
ふいと指先で乱した先にある
あるが、どのような位置なのか知らない
いま手元に残る
何枚かの写真の中に
そんな風景が写り込んでいるが
かすかな匂いこそすれ
そこでめずらしく微笑む男は
落ち着かなげで
溶けるため糸口を
風景の綻びをさがして
ただ自分の輪郭を忘れるばかりだった
*
このひとつの季節が
日本を
寒さの中
凍りつく事なく
過ぎていったら
旅行に出かけよう
曖昧な憧れは
憧れたままで
どこにでもあり
その実なかったかのように
気付かなかったのなら
求めていなかったのだろうから
さがす
とか
さがさない
とか
じゃなく
旅行に
出かけよう
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