ホスピス/比口
 
し指でなぞって、皮一枚のところで思いとどまる。
「きっと、これが生命線」

病室のママにとって、ベッドと花と、白いカーテンが世界の全てで
そんなの盲目と変わらないじゃない。(僕も含めて、ね)
藍色と愛色みたいに。
あいいろ。ママのパジャマの色。
新婚時代にパパとおそろいで買った、ママのたからもの。

それは、生まれたてのぼくの全て。
しわくちゃで、今にも崩れそうな世界。
崩壊しつつある世界、ママのこころ。
白い病室は壊れたこころのわずかな居場所。
ゆるゆると崩壊していく、こころの居場所。

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